兎鳥庵 日記

インコ3羽と ウサギ9羽にヒト1人の日常です                  - ときどき実験ウサギさん里親募集 -

うさぎの胃の生理機能と病気1 (うさフェスタ2013 講習会)

ちょっと間が空いてしまいましたが、うさフェスタ2013講習会、田向健一先生の回です。

  田向先生の病院はこちら  【田園調布動物病院】

今回もスライドの枚数が多いので、3回に分けてのご紹介となります。



スライド1


スライド2

ウサギの消化器の特徴は、完全草食動物であるということ。
リス、ハムスター、プレーリードッグなども似ているけれど、彼らは雑食性です。

草食動物の特徴として、歯はすべて伸びる
リスやハムスターは前歯は伸びるが、奥歯は伸びない。
ウサギは、前歯も奥歯もすべて伸びる(常生歯といいます)

非常に酸度の強い(pH 1-2)胃を持ちます。
⇒ 強酸はあらゆるものを殺菌します。
  乳酸菌などのサプリメントがどこまで機能するか分かっていない。
  害にはならないが、人間と同じように効くかどうかは分かっていない。


もう一つの特徴として、消化器は繊維を効率よく消化吸収します
ワラを食べて栄養にすることができる、これが大きな特徴。

盲腸は大きくて、消化管の50%を占めます。
盲腸は非常に重要な役割を果たしています。

ウンチは硬便と軟便(盲腸便)の2つのタイプがあります。
消化しきれなかったものを柔らかいウンチ(盲腸便)として出して食べることにより、再度栄養をとる。




スライド3

ウサギはウサギ目。
モルモットやチンチラも草食動物だが、齧歯目。
決定的に違うのは、歯。
ウサギは前歯が6本(上4本、下2本)あります。
上の歯は2本しかないように見えるが、裏に2本、釘歯があります(スライド左下)。

前歯の歯根部(スライド右下;抜いた前歯)には、穴が開いている。
ここに歯を作り出す細胞がいつも生きていて、常に新しい歯を送り出す作用をしています。
人間の歯根は大根のような形で根っこがあるが、常生歯は根がない(解放歯根、無歯根)

前歯は1ヵ月に1cm 伸びる。
そのため、不正咬合になると1ヵ月に1回または2ヵ月に1回くらいのペースでカットしなくてはなりません。




スライド4

前歯の不正咬合の例。

これでも餌は食べているので気付かない。
ある日、ふと見たら歯が伸びていると言って連れてこられるケースが多い。
こうなってしまうと、一生、治りません。

上の歯と下の歯がぶつかってこそ1ヵ月に10mm で抑えられているが、すれ違っていると歯は伸び放題になります。
一番の原因は、ケージなどの固いものを噛んだり、落としたりということ。
歯に強い力が加わって、歯根がずれてしまう。

無歯根(しっかりした根がない)なので、力が加わるとおかしくなって歯をねじらせてしまう。
こうなってしまうと、元には戻せません。

固いものがいいとは言うけれど、本当は固いものは良くない。
自然界にあるもので固いものといえば、木の幹くらい。




スライド5

臼歯(奥歯)は上5本、下4本(片側)
歯の形は変わっていて、内側に何となく尖っているが、これが正常。
臼歯も解放歯根で、1年間に約5cm 伸びる。



スライド6

全容はこうなっています。



スライド7

臼歯の不正咬合の例。

上の歯 : 横に伸びて頬に当たって潰瘍ができている。

普通に見ても分からないので、動物病院で見てもらう。
食べなくなったとか、いつまでも口をもごもごしているとか、ペレットを口にしたけど落としてしまうといったような状況からも推測できる。


下の歯 : 尖って、舌に潰瘍がある。

尖ってはいるが、これだけでは異常かどうかは分からない。 非常に難しい。
この場合は病変があるから分かるが、病変がなくて餌を食べているのであれば、これは不正咬合とは言わない。

見た目、明らかに正常でも、病変を作ることもあるし、
見た目、明らかに異常でも、何も症状がないこともある。

伸びたから切る、伸びてないから大丈夫というのではなく、症状に合わせて対処します。




スライド8

食べているときの噛み合わせをポイントしたもの。

ペレットの場合は、上下運動が多い。
加工していない食餌というのは、たとえば牧草。
牧草は横方向の動きをする。




スライド9

奥歯の不正咬合はどのようになっていくか。

縦方向の動きが増えると、横方向の動きが少なくなっていく。
⇒ すり減る箇所が少なくなって、上の歯は外側にトゲを作り、
   下の歯は内側にトゲを作る。

進行すると歯の動きが悪くなってくるので、最終的に食べ物は上下で噛むようになり、結果的にトゲを作る病変になります。
これが、奥歯の不正咬合の原理。


ソフトタイプのペレットがダメでハードタイプのものが良いと思っている人もいるかもしれないが、顎の動きを横方向にしなくては不正咬合になってしまうということです。
単純に餌の固さではなく、顎の動きまで考えなくてはいけない。




スライド10

歯の病気は顔面のいろいろな病気を引き起こします。

これは、涙の出ているウサギさん。
まぶたを開くと穴が開いていて、ここから涙が出ます。
鼻涙管といって、ここから鼻に通じる管がありますが、歯が伸びることによって管を抑え込んでしまいます。



スライド11

歯が伸びると炎症を起こして鼻涙管を狭くしてしまう。
そうすると、涙が流れなくなり、多く出てしまいます。
涙が出るのは、歯の病気。



鼻涙管が狭くなったのを治療で保護することもあります。(以下4枚は動画)

スライド12

点眼麻酔をしているところ。



スライド13

細い管を穴に入れる。



スライド14

水を通して、



スライド15

鼻から出てくる。

この場合は開通しているからいいが、ひどい歯の問題のある子は完全には通りません。
そうすると、涙は拭いていくしかない。
手術はできない。




スライド16

膿を作って脹れたり、歯の奥は眼なので、眼が飛び出てしまう子も結構います。
歯が病気になると顔面全体の病気を引き起こすことになってしまうので、歯は大事にしないといけません。




スライド17

歯を切るのには、このような器具を使います。



スライド18

無麻酔で切る場合には、このように押さえて、



スライド19

カッターでパチッと切ります。


無麻酔での処置は、実は歯にとってはあまり良くありません。
ケージを噛むと前歯の不正咬合になると言いましたが、奥歯をパチッと切ることは、それと同じような負担を定期的にかけているということになり、不正咬合を助長する可能性があります。

よく、無麻酔で切る先生がうまくて、麻酔をかける先生はうまくないみたいなことを一元論で語られることもありますが、無麻酔で切ることはケージを齧って歯を折ってしまうのと同じようなことを定期的に行っていることになります。

高齢だとか、餌を食べなくて弱っているとか、麻酔をかけられない状況も多々あるので、それと歯のダメージとのバランスをみて処置を選んでいかないといけません。
何でもかんでも無麻酔がいいとか、麻酔をかけるのがいいとかいうのではなく、ウサギさんのコンディションをみて選んでいかなくてはいけません。




スライド20

麻酔下での処置。
ガス麻酔で、力が完全に抜けたことを確認して口を開け、奥歯をきちんと見ます。



スライド21

上下だけだと見にくいので、左右に開ける器具もあります。
麻酔下でのぞいて初めて分かる病変もたくさんあります。



スライド22

尖った部分を削っていきます。
切るのとは違って、歯にはマイルドな処置になります。


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コメント


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くろべえがうちに来た昨年4月の体重測定時、臼歯が若干伸びていると言われ、説明を受けても構造面など今ひとつ理解し切れないところがあったのですが、この講習会の記事はとてもわかりやすかったです。ありがとうございます!!
麻酔、無麻酔についても、いざという時のために病院に問い合わせたりしていたので、有難い!

まったくの素人考えで「人間も奥歯はすりつぶす時に使うよな~」と思い、同じ一番刈でも堅めで太いものも一緒に与えるようにして(うっ滞以降、やわらかめのセカンドプレスなども)
10月の目の傷、11月のうっ滞の際に一緒に診てもらったところ、幸い悪化・進行もなく落ち着いていますが
「胃腸の病気」を読んでも、改めて繊維質の大切さを感じました。
もうすぐ4歳になるので、気になったところは鼠蹊ヘルニアでしょうか…。3歳も過ぎてから去勢する必要があるのかどうか迷った挙げ句に止めたのですが。う〜ん。

レントゲン写真もとても勉強になりました。
…先代はんぺんの時も見せてもらったのですが、知識も比較対象もなく全然分からず。(恥)
しかし、どれにもあてはまらないような…むしろ健康体のレントゲンと同じに思える。いったい何が原因だったのだろう。当時もっと知っていれば違う対応ができたはず。
だから、くろべえには安心して健やかに年を重ねて欲しいなー、もっと勉強せねば(アホなので、すぐだだ漏れしてしまうのですが)と思うのです。>あれ?話が逸れてしまいましたね、すみません!!
アホなかーちゃんの息子は、何やら反抗期モード。でも、密かに病気が隠れているかも知れないので、気をつけて様子をみようと思います。

ponsuke | URL | 2014年01月17日(Fri)18:27 [EDIT]


お返事

ponsukeさま
歯の問題は、本当に微妙で難しいと感じています。
牧草は食べないよりは食べた方がいいですが、でも、それだけじゃない、持って生まれたものの要因も大きいですし。
処置の方法も、先生によって使う道具も違えば、技量も違います。
一口に麻酔か無麻酔か、あるいは歯科用の機器であったり、ニッパーであったり、やすりであったり・・・麻酔の有無や道具の問題だけで語れるものでもないでしょうし。
(道具も同じように見えて、実は先生によってかなり違っていたりもします)
実際に飼い主の目の前で説明をしながら処置してくださる先生なら良いですが、奥の間で処置ということになりますと、飼い主は判断のしようがありませんし。。。

胃腸の病気についても、この講習会を聞いて、「そうか、ウチの子はコレだったんだ!」と言える飼い主さんも少ないんじゃないかと思います。
飼い主自身もレントゲンや血液の数値など、ある程度は読めるようになっていないと、十分に先生の説明を理解することも難しいのではないかとも感じました。

普段からうっ滞気味の体質であったり食習慣であったりの子は、他のトラブルを起こす確率も高くなるのでは? とも感じました(ウチは、あいがそうでした)。
この前の林先生がおっしゃっていた、「普段、牧草をよく食べる子は治りが早い」というのも、身をもって感じていたことでした。
牧草嫌いだったライオンズにもっとしてあげられることがあったのではないか、もっとうまく対応できていれば、あいもはるも、もう少し長生きできたのではないか? そんなことを考えさせられた、一連の講習会でした。

鼠径ヘルニアの問題は、多分ですが、予防という意味では、あまり考えなくても良いのかな? という感触です。
我が家でも主治医に相談したところ、男の子の病気はなってからでも対処できるので、あまりにやんちゃが過ぎて危ないとか、スプレーの被害が甚大だとか、そういう問題がなければ積極的には勧めません」と言われて、ライオンズは手術しませんでした。
ただし、なってしまったときには、いち早く飼い主が気付いてやらなくてはならないわけですが。。。

ともあれ、飼い主の勘とか判断がウサギさんの命を左右する事態も多々考えられるわけで、そういった力を身につけるためにも知識は必要だな~と感じます。

くろべえ君も良きママと良き先生に恵まれていますから、大船に乗った気分でいるのでは~ と思います^^

ちゅんちき | URL | 2014年01月18日(Sat)23:08 [EDIT]